メタ個体群とは?


2008年度日本生態学会盛岡大会で行った企画集会「1+1≠2 メタ個体群アプローチが解き明かす生態現象」での発表内容を元にしています


"Population of populations" by Richard Levins


メタ個体群とは複数個体群のあつまりであると定義されています。さらに個体群間につながりがあることが重要になります。

この二つの条件が揃うと(複数個体群がつながりをもつ)、個々の個体群が独立している時よりも
1)全体の存続性が高くなる
2)全体の生息数が多くなる
という現象が生じます。こうした一つの個体群では生じえない現象を扱うのがメタ個体群生態学です。

 

1)存続性のアップ


メタ個体群生態学を始めたLevinsは、この”つながりを持たせる”効果に着目しました。Levinsは「一つ一つは個体群として維持できないものでも、つながりを持たせれば存続可能になる」ことを明らかにしました。



つながりがある場合、絶滅したはずの個体群も復活を遂げるというありえない現象が生じます。これは他の個体群からの移入がもたらすものです。

 

2)生息数の底上げ


メタ個体群レベルでの生息数にも、つながりをもつ効果が観察できます。それが生息数の底上げです。片方の個体群は絶滅しやすいけれど(シンク個体群)、もう片方は絶滅しない(ソース個体群)という条件下で考えます。



色のついた丸の大きさをだいたいの生息数として考えると、つながる前は20+0=20だったのが、つながると20+10=30になります。20だったとこ ろと0だったところをつなげると、全体として30になるという現象です。これも、大きな個体群から絶滅中の個体群への移入がもたらすものです。

こうした単なる足し合せではない現象=”創発現象”が存在するのがメタ個体群であることの醍醐味です。

 

 


※ポイントは、メタレベルの視点をもつことにあります。

 

以下はキーワードになります。

 

メタ個体群(meta population)    複数個体群がつながりをもつことでメタレベルでは維持されている個体群

 

絶滅(extinction)        生息していた生物が死に絶えた、あるいはいなくなってしまった状態 

 


 

移入(colonization)         周辺個体群から個体が入り、 定着すること。

 

 

ソース個体群(source population) 絶滅率よりも増殖率の方が十分大きい個体群。
シンク個体群(sink population)   増殖率よりも絶滅率の方が大きいために、独立では維持できない個体群。

 


シンクは台所のシンクが由来。蛇口からだす水の量(ソース個体群からの供給)が多ければ、排水溝をふさがなくても(絶滅率が大きくても)なんとか水がたまる(イラスト参照↓)

 

蛇口からの水の量が少ないとシンクには溜まらない

 

蛇口からの水の量が多いとシンクにも溜まる!

 

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